個人事業主・フリーランスの経費には気をつけなければならないポイントがあります。
利益の追求が目的の法人であれば、その法人が買ったものはある程度経費にできますが、個人事業主の場合は、生活費との関係もあるので注意しなければなりません。
経費にできる・できないという判断が必要なものもありますし、そもそも経費になり得ないものもあります。そのほか経費を考えるときに気になりそうなところを理解してまっとうに節税していきましょう。
経費にできる?できない?で迷わない
個人事業主の場合は、法人と比べると経費にできる範囲が限られます。
利益の追求が目的の法人は、法人が行ったことは事業のためというように、社長個人と法人は別人として考えます。
ですが個人事業主の場合は個人事業主である自分と家庭のオーナーである自分は同一人物です。
事業と生活費が一緒になっていることがあるので経費については注意が必要なのです。
そこで「経費にできる?できない?」の基準はなに?という問題ですが、
結論は「売上に貢献するかどうか」です。
迷うことがもしあれば、このように自分の胸に問いかけてみてください。
もしピンとこなければ「売上につながるためのものかどうか」、「事業で使ってるものかどうか」と言い換えてもいいです。
それで、胸を張って「これは〇〇だから経費だ」と他人にも説明できれば経費にできると考えて大丈夫です。
奥さんや旦那さん、お子さん、友人でもいいので「説明できるか」を意識するようにしましょう。
そのうえで、注意しなければならないポイントもあります。
実際に売上につながったかどうかは気にしなくていい
「売上に貢献するもの」と書きましたが、実際に貢献したかどうかは関係ありません。
たとえば、
・売れ残りの商品を廃棄した
・新しいメニューを出すための準備でコストをかけたけど結局メニュー化できなかった
個人事業をはじめたらこのようなケースも決して珍しくもありませんが、
このような場合、実際に売上につながってはいませんが、仕入れや準備コストは経費にできます。
※ただ仕入れの場合は、12月末に売れ残った分は経費ではなく資産にします(その後売れれば資産から経費にできます)。
経費にできるもの・できないもの
事業用か生活費か
それとは別に注意しなければならないものが、生活費との区別がつきにくいものです。
たとえば、車です。
普段は自家用車として所有していても、仕事で使う場合もありますよね。
こういう場合のガソリン代などの車の維持費は全部が全部経費にすることはできません。
あと、家賃も。
自宅の一部を仕事のスペースで使っているような場合です。
自宅はもちろん居住用でもあるので、家賃全額を経費にすることはできません。
水道光熱費なども同じです。
どうやって分ける?
ではどうやって事業用と生活費とに分けるかというお話ですが、
結論は「割合で分ける」です(「家事按分」というものです)。
「割合?」とお思いかもしれませんが、
たとえば先ほどの例だと、
車は70%
家賃は30%
を経費にするというイメージです。
このように事業と生活の割合を決めて事業の割合の分を経費にする必要があります。
言い換えると、事業と生活費が一緒の場合は100%経費にはできないわけです。
割合はどう決める?
ここで「割合ってどう決めるの?」という疑問が残ります。
これも結論からいうと「ケース by ケース」です。
はっきりとした基準はありません。
ということは、自分で割合を決めなければなりません。
ただ、テキトーに決めてはダメです。
事業にどれくらい使ってるかを考えて決めなければいけません。
税務署に後から説明を求められたとしてもきちんと説明できるようにしておくということです。
・なぜ車を70%にしてますか?
・なぜ家賃は30%ですか?
この「なぜ?」にきちんと説明できなければいけません。
たとえば、
・家賃は自宅が100㎡の延床面積のうち、仕事部屋が30㎡なので30%に決めている。
・車は走行距離を記録していて、仕事で使った分を計算した70%にしている。
このように割合の根拠も説明できるようにしておくことが必要です(鉛筆をころがしてのような「なんとなく」はいけません)。
そもそも事業用に分かれているもの
事業用と生活費とを完全に切り離していて、事業用のものだけが完全に分かれていれば問題ありません。
何割が経費かを考える必要はなくなります。
たとえば、
・複合ビル内のテナントを借りている
・仕事用のためだけのスマホを別にもっている
このようにはじめから生活費と一緒になる余地がないものは、
「これは売上に貢献してるものだから経費だ」と胸を張っていえるはずです(実際に言うかはおいておいて)。
事業用と生活費を完全に切り離しておけば、経費で悩むこともかなり少なくなります。
なにより、経理の難易度も手間も格段に減ります。
そんなわけで、できるかぎり生活費と切り離す経理方法をわたしとしてはおすすめしてます。
そもそも経費になり得ないもの
経費にできるか、できないかを考えるうえでは「そもそも経費になり得ないもの」もあります。
もし経費にしてしまえば、その分利益が少なくなって確定申告の間違いのもとにもなってしまうので注意しましょう。
10万円以上のモノ
車・パソコンなど10万円以上のモノは一括では経費にできません。
ただ分割でなら経費にできます(減価償却費)。
青色申告であれば30万円未満までなら一括で経費にできます。これも青色の特典です。
借入金の返済
借入金(ローン)の返済の元金部分はそもそも経費ではありません。
利息は経費ですが、元金は別です。
事業のために借りたお金を返すんだから経費だと考えてしまいがちなので注意が必要です。
たとえば、借りたとき借りたお金が入金されますが、この入金は売上でなく現金預金という資産が増えてたはずです。
そう考えると、返したときも経費にはならない(現金預金という資産が今度は減るだけ)とイメージしてみてはどうでしょうか。
家族に支払った給料
家族に給料を支払っても、そのまま経費となるわけではありません。
別々に住んでいて生活費も別のような別生計であれば経費にできますが、同居している奥さん(旦那さん)などに給料を支払ったとしても経費にはなりません。
ただ、青色申告で事業専従者給与とすれば経費にできます。
このあたりは、こちらの記事も参考にしていただければ。
所得控除
経費とは利益(損失)を計算するときに売上から差引くものです。
・売上-経費=利益
そして税金はその利益から控除されるものを差し引いた残りに税率を掛け算して計算されます。
・(利益-所得控除)×税率=税額(イメージのため大まかに)
なので所得控除にあたるこれらのものは経費にはなり得ません。
・小規模企業共済への掛金
・健康保険料・国民年金保険料
・生命保険料
それと
・所得税、住民税
も経費ではありません。
ややこしいし、イメージしにくいですよね。
ではこのように考えてみてはどうでしょう?
たとえば、もしこれを経費にしてしまうと、所得税や住民税を引いた利益をベースに税金を計算するというおかしなものになってしまいます。
〇まとめ
今回の経費についてまとめると、
・経費にできるかどうかで迷ったら「売上に貢献するかどうか」で考える
・生活費と分かれていないものは割合を決めて按分する
・経費になり得ないものはそもそも経費にできない
こんなところです。
それと、レシートでもいいので残しておくことも気をつけましょう。
せっかく説明できても何も証拠がなければ水の泡にもなりかねませんから。